「クリエイティブツアーvol.6」スペシャル企画として、エフ・ディ石川×イノウエサトル×木藤亮太の対談をお届け!
前回の対談では、今回のツアー開催に至る経緯や「自分が世界の中心たり得る」という意味を込めた
“ヴァナキュラー”という言葉の選択について、中央や地方という視点から外して考える「福岡で働く」ということの強みや、
「もっとも自然なクリエイティブの形」についての内容でした。

今回のテーマは「デザイン」。
物理的な視点を超えたデザインの世界について、じっくりと考えさせられる内容です。
現代社会ならではの「デザイン」の多様性は、どんな可能性を持つのでしょう?

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デザインの対象は“もの”だけではない

イノウエ
クリエイティブツアーをやろうと思いついたきっかけっていうのは、聞いてるようでちゃんと聞いてない気がします。
どういう経緯なんですか?デザイン事務所としては面白いなと思って。

石川
もともとはちくごの手仕事(2012年発刊)という本を作ったときに、
色々な工房や人を訪ねて、アートや伝統工芸、産業、食について取材をしたんですけど、それのリアル版ですね、ツアーは。
「これだけ身近に素晴らしいものや人がいるんだから、もっと人を連れて行こう、たくさんの人に知ってもらおう」
そう思ったのが発端です。
なので、第一回目はクリエイティブツアーという名前ではなくて、
体験を主軸とした「人の手から生まれるものづくりワークショップ」でした。
糸を染め、紡ぎ、織るという工程を自らの工房で行ない制作している、小郡市の翔工房さんと、
八女市の町屋で木工作品を制作している「木工詩人」の國武秀一さん、
このお二人のワークショップを、翔工房さんで実施させて頂いたのがスタートだったんです。
実際の「手仕事」を見てもらうためだったり、作り手のことを知ってもらうためだったり、
私たちが普段何気なく使っている“もの”というのは、本来どのような工程で作られるものなのかを知ってもらいたい、
というのが最初の想いですね。

井上
それはエフ・ディデザイン塾のプロセスとして?

石川
それもありますね。デザイン塾の目的は「学び」ですから。
僕らはあくまでも観光会社ではないので、
そこに「学びの視点」がないとツアーやワークショップをやる意味がないと思っています。
学びの視点プラス、僕らがやっているデザインや出版に、どこか重なる部分がないとやる意味はないと思っていて。
そういう視点で実施してみたら、参加してくれる方や興味を持ってくれる方たちがちゃんといて。
普通の観光ルートには載っていないような情報を欲している人が、想像以上に沢山いるということが分かったんです。
それをきっかけに、地方のコンテンツに改めて目を向けてみて、
写真を手段として町を知る大牟田レトログラフィだったり、
ワークショップを通して地元の方との関わりを深めるみやまナチュラルプロダクツを実施していった感じですね。

IMG_4676_c(写真は2013年1月27日に実施した佐世保レトログラフィのもの)

イノウエ
石川さんはデザイン事務所としての“ものづくり”をしつつも、デザイン塾をしていたりして。
話を聞いていると、そういう、人間の関係性だったりとか、“伝える”ということとか、
“もの”以外のデザインもやってるような気がする。
それはどういう思考なんですか?

石川
「デザイン力」っていうのも時代が変わって、“もの”をきれいにするのがデザインだっていう、
単純にそれだけじゃないものが増えてきたなと思っていて。
スピードだったり、その人や“もの”の持つ、“素”そのものが絶妙のタイミングで世の中に出ていけば、
それが広報として成り立って、集客にもなるじゃないですか。
昔はマスにのせるとか、人の目に留まるようにきれいにパッケージしないといけなかったし、
それがすでに用意されている場所…
例えば店頭だったり新聞広告だったり、テレビ広告だったりで勝負しないといけなかったんですよね。
あらかじめ競争する場が決まっていたけど、今は個人のSNSとか、ZINEとか、情報発信の方法がすごく多様化して。
個人売買もネットで行われて、ものすごくこう、“もの”が闘う現場が増えましたよね。

今まではデザイン会社がしないといけなかったことが、
個人の手描きでもいいし、iphoneで撮ったものにコピーを載せただけでも、どんどん届いていくでしょう。世界中に。

そういう個人の情報発信でも、
ある程度のクオリティで人に届けることができる人間を育てたいっていう気持ちがあるんです。
それは、クオリティの高いものを増やすことで、「デザイン業界を底上げをしたい」っていうのにも繋がります。

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木藤
昔はデザインっていう仕事は、完成された“もの”っていうのが成果だったと思うけど、
今は誰でもデザイナーになり得るというか。
写真1枚のクオリティは大したことはなくても、その人の持つ生の情報、
そこで生まれる状況とか発信される情報に価値があるという風潮になってるよね。

石川
そう、きれいさだけじゃないんですよね。
クオリティの高さだけじゃなくて、
発信する人の正直さだったり、気持ちっていうものが入ってれば、そのツールはいいと思うんです。
だからデザイン塾はデザイナーを育てるっていうよりも、
その人自身が思っているもの、伝えたいことを、
ちゃんと形として届けることができる人間を増やしたいっていうのが目標なんです。

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イノウエ
僕らが出たのもKyushu Institute of Design。デザインの学校なんですよね。
(イノウエさんと木藤さんは九州芸術工科大学 芸術工学部 環境設計学科出身)
「デザイン」っていう言葉は英語では実に広義に解釈されていて、
例えば「研究の方法をデザインする」という表現を英語では使ったりするんです。
それは、デザインの対象を“もの”に限定していないという意味で。

僕らが学んだ環境設計学科っていうところは、
もちろん建築の世界にも進めるんだけど、九大にはもうひとつ工学部の建築学科があって。
そっちはどちらかというと、エンジニアなんですよね。
それこそ物理的な“もの”の世界で、計画学とかである程度説明できる世界なんです。
それに比べると、環境設計って本当に幅広くて。

僕は、石川さんがやってることも実は環境設計とも言えるんじゃないかなと思う。
物理的な“もの”じゃなくて、別の視点でそういう、デザイン塾やツアーをやっていくっていうのは、
正にソーシャルな状態をデザインしているわけで。
例えばfacebookを開設したマーク・ザッカーバーグは、「facebookの仕事は世界を繋げることだ」って言ってるけど、
その結果として、世界が変わるとかさ。世界がより美しくなるとか。
なんかそういうことに繋がっていくんじゃないかと思う。
石川さんがしていることは、意外と珍しいことなんじゃないかな。

まだまだ続きます!